第9期 活動報告書
※班活動のみを抜粋して掲載しております。
その他の現地の活動や、国内の活動なども含めた完全版をご覧になりたい方は、ご連絡ください。
lao.wavoc@gmail.com
代表挨拶
私たちは、2013年9月6日~9月21日までの約2週間、ラオスにある小学校2校において教育支援活動を行ってきました。
今回は低学年・高学年への授業・本の寄贈プロジェクト・ノンサ小学校におけるトイレ・水道プロジェクトの4つのテーマを軸に活動しました。低学年対象の授業では、子供たちの知的好奇心を刺激するため、「錯覚」を扱いました。高学年に対しては、新たな知識を得、視野を広げ、そこから何かを感じ取ってほしいというテーマのもと、世界や人類の起源について教え、それらを通して、互いを尊重する心を持ってほしいと考え授業を行いました。これら以外にも、衛生に関する授業や夢についての授業なども行いました。
また今回、団体として初めてハード面の支援を行うためのプロジェクトを発足させました。それが、本を小学校に寄贈するプロジェクトとノンサ小学校にトイレ・水道を建設するプロジェクトです。
ハード面の支援というのはとても難しいものであると考えています。ただ物的支援を行うだけであると現地の方も、モノをもらった、ありがたいな、というだけで終わってしまいます。しかし、それでは私たちが行う意味がないと考えています。それゆえ私たちは、現地でワークショップや調査を行い、現地の方を巻き込むこと、で先生方や村の方々にもより良い小学校にしていくために何が必要なのかを主体的な考えてもらうように促しながらプロジェクトを進めていきたいと考えております。
教育支援というのはなかなか成果がはっきりとは表れず、毎回自分たちの活動は本当にこれでよかったのだろうか、と考えてしまう面もあり、毎回試行錯誤しながら活動しています。しかし、先生方や村人の方から、自分の子どもは日本人の大学生の支援が入っているこの小学校に通えてラッキーだなどといったお話を伺えると、少しは私たちの活動がお役にたてているのかなと感じることができます。活動の成果というのは見えにくいかもしれませんが、これからも誠実に、現地の方々と同じ目線に立って、一緒に考えながら、継続して活動を続けていきたいと思います。
最後に、今回も渡航に際してたくさんの方々にご協力いただき、活動を無事終えることができました。本当にありがとうございました。
第9期代表 久間木祐介
活動目標
団体目標
『チャンパーサック県の人々の内面的成長を促す』
長期的な視点で、私達が目指す目標をこう置いている。内面的成長とは、「将来について考え、そのために現状を見つめなおし、今何が必要かを考え、行動できるようになる」こと。
この言葉は、「現地の人々の内面的な成長によって、教育現場やチャンパーサック地域の問題が解決へ向かい、自立的活動を促すこととなる」との団体の考えによる。
9期活動指針
「子供達の視野を広げ、将来の選択肢を持てるようにする」
現地からのニーズを大切にし、要請された題材やテーマで、暗記ではないスタイルの授業を提供します。世界遺産ワットプーの観光地化と共に生きていく子供達にとって、農業以外の様々な選択肢を持てるようになることが大切だと考えています。
低学年班 錯覚
文責:渡邉舜
班員:渡邊舜(班長) 豊島優 市川結理 山本さとみ
中村理沙 城石愛麻 石渡裕香
<班発足>
これまで行ってきた低学年と高学年の混合の授業では、授業の理解度に学年ごとのギャップが生まれていた。そのギャップを解消すべく、学年に合った難易度の授業を提供するために発足された。また、低学年には定着度の低い衛生の授業も継続して行うこととなった。
<長期目標>
低学年の小学生たちが高学年になったときに、思考の基本的なプロセスである【仮説・検証・考察・発信】を自発的に行えるようになる。
<今期目標>
1.”物事(錯覚)に興味を持ってもらおう!”
錯覚や錯視の授業を通して、子供たちに面白いという感覚やインパクトを与えることで、「物事に興味がわく」という経験をさせる。「物事に興味がわく」ということは、上記した思考の基本的なプロセスの【仮説】を生むファーストステップになると考える。
2.“積極的に意見を言おう”
意見を述べる場を設けることで、思考の基本的なプロセスをする経験をさせる。意見を述べること、つまり【発信】には、思考の基本的なプロセスを踏む必要性があると考える。
<活動内容(国内)>
① 目標を満たす題材の安出し・決定…スライム、折り紙などの工作やマシュマロチャレンジ、音楽の授業などが案として出された。題材を決定する基準として、
Ⅰ.インパクトはあるか。 Ⅱ.面白さ・不思議さがあるか。 Ⅲ.実現性はあるか。
を挙げ、コンペティションした結果、錯視・錯覚の授業が採用された。
② 具体的な授業構成の決定と台本作成…低学年に授業するうえで認識すべき課題を取り上げ、目標を達成する構成を考えた。課題として、
Ⅰ.集中力の欠如 Ⅱ.理解度(難易度) が挙げられた。
その解決策として、授業時間の短縮化や、子供たちに対する質問をできるだけ噛み砕くこと、できるだけ視覚化すること、集中力を切らさないために少人数のグループ制にしたことなどを授業構成の工夫として取り入れ、台本を作成した。
③ 備品準備…現地で教材が足りないという事態が起きないよう、必要量の1.5倍の教材を国内で準備していった。
<授業内容と様子>
(1日目)錯覚や錯視の面白さと不思議さをクイズをしながら体感してもらった。また、クイズの答えを個々が考えるだけでなく、少人数のグループで意見を交換する場を設けることで、全員が【発信】する場を提供した。
→クイズの錯覚の種類によって子供たちの反応に差はあったが、子供から「おおー」「うわー」という声が聞けた。
→低学年と高学年を分けたことと、少人数の意見交換TIMEを設けたことで、意見を言いやすいようだった。
→女の子の方が男の子より授業に集中していた。
→通訳のボビーが、終始授業を引っ張っていた。子供たちも、楽しそうで集中力を最大限保てた。
(2日目)いろいろな錯覚を実際に作ってもらった。実際に作ることで、錯覚の仕組みの理解を深め、更に錯覚に興味を持ってもらえるようにした。また、作った錯覚を発表し、クイズを行うことで【発信】の場を提供した。
最後に、紙芝居を利用して「錯覚のように、一つの物事にも、いろんな見方や考え方がある。だから日頃から自分の周りの人の考えや見方を意識してみよう!」と伝えた。これにより、子供たちが日ごろから、いろんな事に興味を持ってもらえるよう意図した。
→錯覚を作っているときの真剣さは物凄かった。
→作った錯覚の種類にもよるが、錯覚への食いつきは良かった。「おおー」という声が聞けた。
→現地での反省から、私たちスーンも生徒と同じ立場で真剣に授業に参加した結果、子供たちの集中力を少し引き上げられた。
→少し時間が長くなってしまい。後半の集中力をかけさせてしまった。最後の紙芝居の内容が伝わらなかった様子。
<反省>班員の10点満点評価
1.物事(錯覚)に興味を持ってもらう
平均点:6.41点
評価:子供たちの表情の変化を読み取ることができた。したがって、子供たちにインパクトを与えることができたと考える。ただ一方で、今回の「授業が単発であった」という評価もあった。錯覚がラオスの小学生にとって身近ではないために、今後錯覚というものに興味を持ってくれるのかは疑問が残った。
2.積極的に意見を言おう
平均点:7.58点
評価:周りの意見に流されずに、意見を主張し続ける子供も見られ、意図した結果が得られた。グループごとのスーンのメンバーが付いて、ラオス語を使って一人一人に質問できたのも大きな要因と評価できる。ただ、私たちのラオス語には限界があるため、もっと徹底して先生をグループに巻き込む余地があった。
<個人感想>
授業全体を通して、満足といえる活動だった。私たちが国内で台本を作成する段階で意図した子供たちの姿を多く見ることができた。一番心配していた集中力の持続に関しても、授業の途中で“ヘッドショルダーズ”という英語の歌で体を動かすことで、ある程度解決することができた。そのほかにも、現地での台本修正や突然のトラブルもあったが、班員と通訳のボビーの臨機応変な対応のおかげで、毎回ベストの授業を提供できたと考えている。本当に感謝したい。
低学年班 衛生
文責:豊島優
今期の衛生活動概要
◆目標:新しく加わった低学年に対し、自発的に手洗い・歯磨きをしてもらえるよう、意識化を行う。
目標設定の背景:低学年班の対象は1、2年生。衛生への意識(歯を磨かなければ!手を洗わなければ!という気持ち)が自発的に行う習慣となるのではないかという考えに基づき目標を設定。
◆内容:紙芝居と劇
意識化につながりそうなものとして紙芝居・劇をアレンジして行うこととなった。
授業を作るにあたって:1期から8期までに行った衛生の授業を振り返った。
新たなアクティビティを作成し行うことも検討したが、過去に行った衛生の授業の方法が豊富であったこと、毎年新しく加わる小学生は、過去のものを知らない子が大半であることを加味し、過去に使用したものを再度使用することになった。しかし、従来は手洗いの紙芝居、歯磨きの劇を行っていたが、手洗い紙芝居の紙芝居がないということになり、今回は歯磨きの劇を紙芝居で作り直し、手洗いを劇に作り直した。
また、紙芝居・劇の実施にあたっては、高学年が低学年に教えるという方式をとる方が、私たちが教えることよりも有意義ではないかということもあり、高学年に演じてもらうことにした。
実施の様子
◆ノンヴィエン小学校
当日までに役者を集め、練習することができた。しかし、練習で判明したのが、ラオス語を読むことが高学年の子にとっては精一杯のことで、とても演じるのは困難であるということ。そこで急遽、手洗い劇用の紙芝居を作成し、当日は紙芝居を2つ上演することにした。
◆ノンサ小学校
当初予定していた練習の日に役者を集めることができなく(大雨の日は、雨で道が塞がってしまうため大半の子が登校できなくなる。)、先生方が読んでも良いか、と前日に先生から話があった。
残念だと思いつつも、仕方が無いとあきらめていたが、当日行ってみると、高学年の子が練習している!加えて、小道具まで用意してくれている!と、いうことでノンヴィエン小学校同様、2つの紙芝居を高学年に読んでもらうことができた。
実施所感
目標としていたのは「衛生の意識化」だが、自分自身この授業を作っていて、目標が高学年の子が当日上手く読んでくれることにすり替わってしまっていたのかもしれない。しかし、それでも高学年が頑張って読んでくれた紙芝居の内容が低学年に多少でも伝わっていればと思う。
また、衛生には関係のないことだが、ノンサ小学校の先生が私たちの意図を汲み、なんとか高学年に読ませようとしてくれたこと、低学年が理解し易いように小道具を用意してくれたことが大変嬉しかった。
今後に向けて
衛生の授業は1期から続いてきた活動。衛生の授業を何のために行うか、誰に対して行うか、そもそも継続していくのか毎回全体の議論になる。しかし今期その議論が必ずしも十分でなかったと感じている。そのために、一つの班を作らず、低学年班が1日だけを使い賄うことになった。10期となる次期、この衛生を続けていくかどうか、続けていくのであれば誰に対し、どう行っていくか慎重に吟味し、判断していければと思う。
高学年班 世界の多様性と人類の起源
文責:蓋盛咲弥
◆班員
蓋盛(班長)、国本、久間木、本城、佐々木、高橋、小川、高橋
◆高学年班発足にあたって
今期はスーン初の試みで、高学年と低学年を分けて授業をした。毎期の反省として、高学年と低学年を一緒にして授業をしてしまうと、高学年にとっては既知の授業でつまらない、低学年にとっては考える授業についていくのが難しい、という問題点があった。そこで、今期は高学年と低学年を分けて授業をし、私たち高学年班は、高学年だけの授業であることを生かし、知識だけではなく、子供たちが「考える」ことのできる授業を目指した。
◆班目標
「生徒は、世界は多様だが、人間の起源はみな同じである、という知識を得る。そのことから、互いを尊重し、他者に対して理解を示す心を持つ。」
①このテーマを扱う理由
ラオスに限らず、世界中で戦争や紛争、差別が起きている現状がある。これは、人を思いやり、尊重することが足りないことが原因のひとつにあり、見た目や考え方の違いを乗り越えて、互いを尊重する心を持つことの大切さは、全世界の人々が学ばなければならないことである。
②このテーマをスーンが扱う理由
私達は外国人であるからこそ、人種の違いを超えた交流や相互理解について、よりインパクトを持って伝えられる。
◆一日目
・テーマ:「世界の多様性を知ろう」
・授業内容
熱い地域、温暖な地域、寒い地域、乾燥地域、高山地域の五つの地域について学ぶ。内容は伝統衣服と伝統的住居。それに関連して人種による見た目の違い(目、髪、肌の色)を実感してもらう。
①導入
簡単なゲームを通して、陸より海の面積が大きいということを知ってもらう。その後、知っている国の名前や、世界にはいくつの国があると思うかを発表してもらう。
→子供達からは東南アジアの国と日本の名前が挙がった。世界には195か国もあるということを伝えると、教室中におお~という驚きの声があがった。
②グループワーク
5~8人ずつグループを作り、それぞれの地域では、どの衣服と住居が適切であるかを班全員で予想する。その後、なぜその答えになったのかを発表する。
→グループ内で、それぞれが写真を指差しながら理由をつけて自分の意見を言い合う、良い話し合いの様子を見ることができた。しかし、自分たちの知らない気候については予想するのが難しかったようで、全問正解したグループは少なかったが、導入としてはうまく興味をひきつけることができた。
③答え合わせ
グループワークの答え合わせをしながら、世界の多様性について学ぶ。
写真を見ながら各地域の衣服と住居について、ラオスのものと、どの点が異なるのかを発表してもらう。個人用のワークシートに、衣服と住居の写真を貼っていき、自分の世界地図を完成させた。
→ラオスと比較させることで、それぞれの違い・比較に目をつけさせることができた。
④まとめ
一番多く正解したチームの表彰をした。
◆二日目
テーマ:「人類の誕生を知ろう。」
①人類クイズ
猿から人間への進化の過程、また各大陸への移動について、クイズ形式で学ぶ。途中途中で、なぜそのようになったのかの理由も発表してもらった。
視角にうったえるものを多く使い、難しい内容でも子供が理解できるように心がけた。
②感想ワークシート
一日目、二日目の授業を受けた感想、また一番印象に残ったことを絵に描いてもらった。
③まとめ
一日目で学んだように、世界は多様性に富んでいるが、二日目で学んだように、人間の起源は同じである、ということを再確認した。世界には見た目や考え方の違いから紛争や戦争が数多く起こっているが、その違いを乗り越えて、仲よくしてこうというメッセージを伝えた。
◆所感
一日目にグループワークを取り入れたことで、ひたすら座学の形式にならずに良かった。グループ内で相談しながら答えを一生懸命考えていて、メインにつながる良い導入にもなった。
一日目では世界の多様性について授業をしたが、最後感想を聞くところで、ノンビ、ノンサを通して「世界には服や家などたくさんの違いがあるとわっかた、知れてよかった。」というような感想が多く挙げられていたので、教えたかいがあったと思う。
二日目に関しては、クイズ形式にしたことで、比較的こどもたちが飽きずに、最後まで集中して授業を聞いていたように思う。一方、感想シートを描くときに、授業とは関係のない絵を描いていたり、授業の感想を描いてほしいのに、単に絵の説明を書いている生徒が多く見受けられた。前期と同様、感想を描くことが苦手な生徒が多い。個人的にはこれが今後の課題ではないかと思う。
高学年班 将来の夢について考えよう
文責:飯川桃子
◆目標:自分の将来の夢について考え、将来の夢が大切なものであると知る
◆授業内容
①将来の夢について絵を描く(約30分)
色画用紙に自分の将来の夢の絵を描く
梱包テープを使って、コーティング&補強し、しおりの形に完成させる
⇒生徒の夢は、多い順に、先生・軍人・警官・医者・看護師、にしぼられた。
その他には、会社員・村長・スーパースターもいた。
②発表(約10分)
何人かの生徒に、自分の将来の夢と、その理由を発表してもらう
⇒先生:ラオスではとてもいい職業だとされているから
医者・看護師:人を助けられるから
軍人:かっこいいから
警官:かっこいいから
スーパースター:お金がたくさんもらえるから
③インタビュータイム(約15分)
先生・通訳・教育局の役人・スーンメンバーにインタビューをする
「小さいときの夢は何だったか」「どんな仕事か」「なぜ今の職に就いたのか」「良いところは何か」などを聞くことで、生徒が多くの職業を知り、考えるきっかけにする
⇒先生:生徒に知識や、良い職に就くチャンスなどを与えられることが、先生という職業のいいところ
④まとめ
「自分の将来の夢はとても大切です。しおりを使うことで常に確認し、夢を叶えるために、日々努力しよう。」とまとめた
◆反省
子供が何の絵を描いているのかがわかるようにラオ語リストを作るべきであった。また、絵を描いてもらうまでの説明が短く、理解できなかった生徒もいたため、説明を絵を用いて行うことも必要であると思う。
◆所感
想定はしていたが、やはり子供達の将来の夢は限られていた。軍人が多かったため、ラオスの軍について調べてみたが、日常的に軍人が街を歩いていることはないようだ。どちらかというと、日本の小学生が将来の夢をサッカー選手などというように、自分と遠い存在でありかっこいいという理由が強いと思われる。職業とすると幅が限られてくるが、抽象的な内容でも可にすれば、もっと広がるかもしれない。(例えば、ラオスの発展に寄与したい、や、おいしいお米を開発したい、など。)また、対象を小学生としているため、限られるのは、年齢的に仕方ないことであり、それは夢がないからではなく、単に他を知らないからが強いはずだ。
しかし、インタビューをしているときに、子供達に「英語を話せるようになりたい人!」や、「海外に行ってみたい人!」と聞くと、5年生を中心に勢いよく手が挙がり、外への興味は強いと感じた。
また、インタビュー中は、生徒のくいつきがとても良かった。普段はなかなか聞けない、様々な職業観を聞けて、有意義な時間になったようだ。
◆BOOKプロジェクト
今回の授業で生徒に作ってもらったしおりを日本で販売する。9/26~10/9のSFT合同企画時、10/20ホームカミングデー、11/2、3早稲田祭にて販売したり、寄付を募る予定。売り上げは、BOOKプロジェクトの、生徒に贈る本を買うお金にあてる。
トイレ・贈書班
文責:山崎緑
1.概要
◆班員 山崎緑(班長)、勝山朋美(資金調達・広報チーム長)金井寛之(贈書チーム長)、
大井樹(トイレ水道チーム長)、飯川桃子、小野寺萌、日下裕梨、高橋さやか
◆班概要
当班は、「トイレ水道を建設し、本の贈書を行う」企画を推し進めていく班である。
◆班発足背景
私たち、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター主催ラオス学校建設教育支援PJは、早稲田大学がラオスに建設した小学校で、ハード面での支援にとどまることなく、箱の中、つまり教育というといったソフトの面でも支援しよう、といった信念のもと、これまで8回の渡航で教育支援を行ってきた。
その過程で、2つの問題に直面した。
1つ目は、「学習環境の不整備」である。
私たちが訪れている1つの小学校(ノンヴィエン小学校)には、トイレ水道電気が完備されており、子供たちは学校にいる間もトイレを使ったり、手を洗ったり、暗い日には電気をつけて、暑い日にはファンをつけたりしてより快適に学習をすることができている。
一方で、もう一つの学校(ノンサ小学校)にはこれらの設備がなく、トイレに行きたい子は学校の裏庭で行い、汚い手のままお菓子を食べたり、木の実を食べたりするために下痢症状になることもあると、7期に行った調査で知ることとなった。さらには、小学校の先生方から「小学校にトイレ水道が欲しい」との声が上がった。団体目標に掲げている、「子供たちの視野を広げて、選択肢を増やす」教育を行うために、まずその学習環境が整うことは重要であると考え、ノンサ小学校へのトイレ水道建設を視野に、活動を始めることとなった。
2つ目は、「継続性」である。
私たちは、これまで4年間、欠かすことなく半年に1回現地へ渡航し、教育支援活動を行っている。しかし、どんなに私たちの授業で頑張って、「今のラオスのカリキュラムや人材ではなしえない授業」を行ったとしても、私たちがいない間はそれが途切れてしまう、という問題に直面した。
ラオスは暗記教育で、子供は教科書をノートへ丸写しして覚えるだけ。学校や地域に教科書以外の本はなく、子供たちの創造性を掻き立てるものはない。
そこで、子供たち自身の発想をはぐくむツールがあればと考え、「教育の強化」という効果を持つ、本を小学校へ本を贈れないかと考えた。
以上の経緯で、私たちは今期からハード面での支援、具体的にはノンサ小学校へのトイレ水道建設と、ノンヴィエン・ノンサ小学校への贈書を行うべく活動を始めた。
◆実行体制と各チーム
上述の企画を推進するために、当班を3つのチームに分けることとした。
1つ目は、「資金調達・広報チーム」。ハード支援を行うために必要となる、外部資金を調達するためのチームである。今まで外部資金を調達したことがないため、今期は特にその基盤となる広報戦略や企画書、企業協賛活動のための基盤をつくることを目標とした。
2つ目は、「贈書チーム」。2015年2月渡航(10期渡航)での贈書実行を目指し、贈書に関する企画・計画を進めるチームである。今期は特に、「特定非営利団体 ラオスのこども」を初めとする他団体からの協力を得て、企画の意義や効果をまとめたり、贈書してからの活用案を考えたり、来期実行の為に今期必要となる現地との話し合いの計画などを行うことを目標とした。
そして3つ目は、「トイレ水道チーム」。2016年9月の施工完了を目指し、トイレ水道建設に関する企画・計画を進めるチームである。建設を前提に活動を開始したが、本当に現地で必要とされているのか疑問点が残っていたり、トイレ水道があるノンヴィエン小学校で水漏れがおこっていたりとメンテナンスに課題が残っていたり、水質調査等をまだ行っていないなど、不明瞭な点が多かった。そこで今期は、前述したような不明点の調査を行い、団体として本当にトイレ水道を建設するかどうかの判断を下せる情報を得ることを目標とした。
2.資金調達・広報チーム
① 広報活動
広報部と協働し、HPの改善、ブログ更新頻度の底上げ、TwitterやFacebookなどSNS媒体を使った発信の工夫、これらを通して、弊団体の活動内容や活動状況、またメンバーそれぞれの所感などを、外部の方々に知ってもらえるように発信した。
<具体的内容>
・ブログ:一か月の目標更新数を定め、題を決めて担当者を割り振り
・Twitter:フォロワー数の拡大(約700から1300ほど)
・Facebook:団体用アカウントと個人用アカウントの併存を個人用に統一
ブログ、Twitter、Facebookの連携
② 資金調達活動
贈書チームと協働でBookプロジェクトの企画書を作成して、協賛活動対象企業をリストアップし、地球の歩き方を発刊するダイヤモンド・ビッグ社様に協賛の依頼にいった。また来期のために別の資金調達方法の考案をした。
<具体的内容>
・贈書の目的、意義を考え、DOCとPPT版で企画書を作成
・WAVOC事務所・事務長外川様、並びに本間様との打ち合わせで企画書や契約内容(仮)をチェックしていただき、ダイヤモンド・ビッグ社を訪問
・今後のおおよその資金調達方法は、SFT共同企画の教科書販売で募金箱の設置、ホームカミングデーでの募金と協賛の依頼、関係者様からの寄付金、「地球の歩き方 学生ボランティア」フリーペーパー配布による資金、早稲田祭での売上金・寄付金
③ 結果と反省
今までブログ、Twitterなど更新が滞ってしまうことが多かったが、9期では改善され多くの人々に向け発信することができた。初の活動で手さぐり状態であったが、今まで外部を意識した活動をあまりして来なかったスーンが、自分たちの活動が客観的にどう捉えられるのかを意識する機会になった。他の団体や企業と接触することによって、様々なフィードバックを受け初めてわかったことが多く、スーンが団体として成長できた。今後は広報戦略などを勉強し、広報の幅を広げるべき。またスーンの成長のためにも企業協賛の活動を拡大していきたい。
3.贈書チーム
① 贈書を行う意義と効果を話し合う
具体的には、各自が贈書を行っている他団体の活動内容や活動の結果、専門家の意見や論文などで示されている本を読むことの重要性や効果などを調べたうえで、我々が活動している小学校にどのような影響を与えられるかを班内で議論した。
② 具体的な贈書案の作成
次に、どういった本を贈りたいか、贈った後の管理方法はどうするか、今期以降の贈書のシステムはどうするか、現地の先生へのワークショップの内容について話し合った。
③ 「特定非営利法人 ラオスのこども」との連携
小学校へ贈書を行うために、「特定非営利法人 ラオスのこども」様に、贈書をするために必要なことを指導していただいた。
④ 現地での活動について
今期は贈書を行えないため、来期以降の贈書計画、贈書した本の管理方法や貸し出し制度についての案を日本で考え、渡航した際に現地の先生と共有することとした。また、授業後に行われる茶話会で先生方に聞きたいことを話し合った。茶話会はネット等では得られない村の情報や、村人の考え方や価値観を知れる重要な場であるので、贈書をする上での弊害や、子供達・先生方の本に対する意識等、贈書をする上で知りたいことを話し合った。
⑤ 結果
1、ノンサ小学校
すでにJICAのプロジェクトで小学校に図書箱と200冊程度の蔵書が存在するノンサ小学校で、はじめに図書の使用状況のヒアリングをし、別日に本をもっと子供たちに読んでもらうためのワークショップを行った。
まず、使用状況について質問したところ、全学年、週に一度の図書の授業の時間を設けているそうだ。その授業を見学させてもらうと、先生が生徒に適当に本を配り、読ませるのみ。本は難易度別に分けられておらず、本の内容は4、5年生向けのものが多いため、難しい本やすでに読んだことがある本が配られた生徒は退屈そうにしていた。読み終わると、前後や隣の生徒と交換して読んでいた。読んでいるときは集中して本の世界に入り込んでいた。生徒は、本を読むことがとても好きであることが伝わった。なお、字が読めない低学年の授業では、先生が読み聞かせるそうだ。
貸出制度について聞いたところ、①旧校舎時代は行っていたが最近は行っていない ②新学期が始まったばかりだから行っていない の2つの回答が返ってきたため、どちらが真の情報なのかがわかりかねなかったが、貸出カードが2005年で止まっていたことから、貸出制度が今は行われていないと捉えた。
現在学校にある図書箱は2002年(旧校舎時代)に、JICAの支援で行われた政府の全小学校に図書を置くPJの際に置かれたもので、生徒は既にほとんどの本を読みつくしてしまっていることや、中には小学生には難しい字が多い本があること、キンダーガーデンや1年生向けの絵本が少ないことなどから、新しい本が欲しいというのが先生からの要望であった。また、生徒数が多いため、授業で本を使うことを考えると、頻繁に本を貸し出すことができないということも問題点としてあげていた。
そこでワークショップでは、子供が本を読む時間を増やすために貸出制度を復活させることを先生が取り組むべきこととし、私達は新しい本を持ってくることを約束した。貸出カードが本来の厚紙がないから作れないという先生の意見に対し、従来の完璧なやり方でなくても、ノートの紙でもいいから貸出カードを作って貸し出すことが大切と伝えた。先生は2~3日ですべての本に貸出カードを手書きで作成し、壊れていた本を修理し、本箱を掃除してくれた。新学期で忙しいにも関わらず、すぐ行動にうつしてくれたことに驚いた。新しい本はどんな本が良いかという質問には、絵が多くあり、文字が少ない、読みたくなるような本が良いとどの先生も口々に言っていて、生徒の文字を読むことに対する抵抗感は先生も感じていることであるのだと実感した。しかし、最後の方は、何か物がなくて困ったときに、村に助けを求めたりするのかという質問から、学校と村の関わり方についての質問が続いてしまい、話し合いでなくなってしまったことが反省点であった。
2、ノンビエン小学校
150人以下の小学校は、政府のPJ対象校にはならなかったため、生徒数が少ないノンビエン小は本が全くない状態である。ワッタナー先生はキンダーガーデンの子どものために、ノンサ小学校から借りてくるそうである。しかし、生徒が本を壊してしまったり汚したりしてしまう恐れがあるため、借りずらいという現状を聞いた。ノンビエンにも本があれば、もっと気軽に子供達に多くの本を読ませることができるのだけど・・・。という声を聞いて、ノンビエン小にも本を贈る方向でワークショップの話し合いを進めた。
まず、本を子供に読ませたいというモチベーションをあげ、話し合いに積極的になってもらうために、本を読むと得ることができる良いことを、先生・スーン・役人でブレストをして案を出した。先生からは多くの意見が出て、本が教育にとってとても良いものであることを理解しているようだった。
次に、これらの良いことを持つ本が次期にこの小学校に届いたら、どうやって子供に読ませるかという題で、置き場所はどうするのか、本を読ませる時間はどうするのか、などについて話しあった。置き場所については、初めは管理がしやすいように、職員室がよいという意見であった。しかし、生徒が先生を怖がっている現状を考えると職員室はどうか?という問いから、空き教室を図書室にしようと先生から提案があった。低学年は管理が難しい(教科書でさえなくしてしまう)ため、低学年には授業内で本を読ませ、高学年には休み時間(午前・午後どちらも20分休憩)などにいつでも読めるようにしたいと言っていた。高学年には貸出も行いたいと言っていて、とても活発に先生から意見が出て、とても良かった。図書室に生徒が来たくなるように、レイアウトなども工夫してはどうかと提案すると、とてもいいアイディアだねと反応が良かった。
しかし、ノンビエンには元々トイレが設置されていたが、そのトイレや水道は長らく壊れたままであり、スーンに直してほしいと訴えるだけであった。本を贈っても、トイレや水道のように管理がきちんとできるだろうか、壊れたら放っておかれはしないだろうか、などの点が懸念点となった。そこで、トイレの壊れている状況を調査すると、水を汲んだバケツがあれば、トイレが使えるようになることがわかった。そこで、バケツを置くことで3つのトイレを使うことを先生側が取り組むこととし、私達は次期本を持ってくることを約束した。このワークショップが行われたのは午後だったが、その翌日の朝には先生がバケツを買ってトイレを全室解放してくれた。瞬時に行動に移してくれたことに対してお礼を言い、これからもお互いに生徒のために学校を良くしていこうと確認しあった。
⑥反省
それぞれの学校で異なった反省が出た。まずはノンサ小学校では、初めてのワークショップであったため、模索しながらの実施となった。途中までは互いに意見を交わせたが、最後は私達からの一方的な質問になってしまった点や、はじめに先生の話し合いへのモチベーションを上げることの重要性が反省点としてあがった。制度や現状についてはワークショップ前に把握しておくべきことであり、この反省点はノンビエン小学校でいかされた。ノンビエン小学校では、本に関するワークショップについては成功したといえる。先生から積極的な意見が出て、良い話し合いができた。しかし、本を届ける代わりにトイレを使えるように開くということが、先生の中で上手くリンクしないまま、バケツの話に移ってしまったため、無理やり負担を負わせてしまったのではないかという懸念点が反省点としてあがった。これについては、まずトイレを使えるようにするメリットや、何か物が壊れても、工夫次第で使えるようになることなどをわかってほしいときちんと伝えるべきであった。しかし、先生と1時間時間をとって話し合うことは初めての試みであり、今後もワークショップをうまく使い、コミュニケーションをとっていきたい。
4.トイレ水道建設チーム
① トイレ・水道を建設する意義
トイレ・水道班では最初、トイレ、水道を作る意義を考えた。トイレ、水道がないことにより学校で起こりうる可能性がある問題を考えることからはじめた。現地でおこると考えられる問題としては衛生面から子供たちの健康が脅かされること。子供たちが学校の授業に集中できないこと、子供たちが屋外で排泄することに恥ずかしさを感じていることがあげられた。
これらの問題からトイレ・水道を作る意義を子供の学習環境に関わる意義と人間としての尊厳に関わる意義の2つに分類した。学習環境の意義として、子供の学習環境を改善し、子供がより学習に集中できるようにする。尊厳に関わる意義として、衛生環境を改善することで病気の発生を防ぎ子供の命をまもる。子供が恥ずかしさを感じることなく生活することができるようにする。
② 現地調査
次に現地の状況を把握するため、現地調査を行うことにした。調査は、先行研究より、意識調査と衛生調査を行うことが必要と考えた。
意識調査では子供、先生、親を対象にしてそれぞれのトイレ・水道をはじめとする衛生についての意識を調査する。子供からはトイレを外ですうということに対して実際に恥ずかしさを感じているのか、授業の中でトイレを我慢したことがあるかという実体験をインタビュー形式で聞き、先生や親からは保護者という観点から子供たちの衛生面についてどう感じているか、子供たちのためにトイレ水道を必要と感じるか、ということを聞くことにした。
衛生調査ではトイレの周りの環境を調べ、また子供たちの普段の行動を観察し、子供たちにとって衛生的に悪影響があるものはないかを見つけることにした。
③ 結果と反省
実際に現地に赴いたところノンサ小学校にトイレがあるという事実が判明した。詳しく聞いてみたところノンサ小学校の卒業生の方がトイレを寄贈したということであった。
また、ノンビエンでのトイレの使用を調査したところ3つあるトイレのうち1つしか使われていないということがわかった。原因はノンビエンの水道が壊れてしまっていることであった。そこで水道の水を使わなくてもトイレに水をため、トイレを3つとも使えるようバケツを寄贈した。
今回の班の反省としては現地の状況を把握できていなかったことがあげられる。現地と連絡をとり、ノンサにトイレができていたということをいち早く知っていれば、活動の無駄を省けたと考えられる。また、意義を考える際にトイレ・水道を作るという大前提のもと話し合いを進めてしまったことも反省すべきである。
最後に現地での反省だがノンビでトイレをすべて使ってもらう理由を説明することなく、ただバケツを渡して、トイレをすべて使うよう約束させたことは問題であった。なんのためにトイレを3つ使う必要があるのかということを我々自身が把握していなかったことも問題であると思う。
実際トイレは1つしか使われていないという状況で特に問題は起きていなかった。そんな中、3つ使うことの必要性を考え、先生がたに説明することもなく、3つのトイレをただ使ってもらうようお願いしたのは問題であった。
水道については今後、贈書との兼ね合いを考えながら作るかどうかをもう一度考えていきたいと考えている。