第7期活動報告 The Report on the 7rd period

代表挨拶

 

 

私たちは201293日~916日までの約2週間、ラオスにある小学校2校において教育支援活動を行ってきました。

 

今回は理科実験・地域教育・衛生調査の3テーマを軸に活動しました。理科実験の授業では、「水溶液」を題材にして、モノが溶けるってどういうことだろう?なんで溶けるのだろう?という疑問を生徒に考えさせ、その原理に「なるほど!」と納得してもらうことで勉強の楽しさを感じてもらいました。

地域教育の授業では、自分の地域のことについて新・再発見してもらうことで、地域について興味、関心を持ってもらいたいというテーマをおきました。この地域教育活動が始まった理由が現地で住民の意思を無視して行われている観光開発に関心を持ってもらいたいという、とても小学生には難しいものだったので、どのように授業を構成していけばよいのか悩みましたが、今回は生徒に調べ学習をしてきてもらい、それをクラスの前で発表してもらうという形式をとりました。

また衛生については、今まで活動してきた中で話すときに仮定が多く、自分たちの活動が本当に意味のあるものなのかが分からないということがあり、今回は衛生について自分たちができることはあるのか、あるとしたら、それはどのようなことなのかを知るために調査活動を行いました。

 

教育支援というのはなかなか成果がはっきりとは表れず、毎回自分たちの活動は本当にこれでよかったのだろうか、と考えてしまう面もあり、毎回試行錯誤しながら活動しています。しかし、私たちが訪れる2週間の間は生徒の出席率がとても良いという話を先生方から伺うことができたり、村人の方から、自分の子どもは日本人の大学生の支援が入っているこの小学校に通えてラッキーだなどといったお話を伺えると、少しは私たちの活動がお役にたてているのかなと感じることができます。 活動の成果というのは見えにくいかもしれませんが、これからも誠実に、現地の方々と同じ目線に立って、一緒に考えながら、継続して活動を続けていきたいと思います。

最後に、今回も渡航に際してたくさんの方々にご協力いただき、活動を無事終えることができました。本当にありがとうございました。

 

ラオス学校建設教育支援プロジェクト~スーン~

第7期代表 久間木裕介

活動理念

『共に考え、共に感じる』

 

 私たちは理念として、「共に考え、共に感じる」を掲げて活動しています。

この理念は、私たちの活動に対する姿勢(スタンス)を表しています。いわゆる「ボランティア」と呼ばれる活動は、その支援が期せずして「押し付け」のものになりがちです。それは、ボランティアを「する」側と「される」側の構図を明確にするところから始まります。自分たちの価値観を押し付け、活動し、満足する―それはただの自己満足です。

 

 「共に」は私たちの根本にあるキーワード。活動においては押し付けではなく、あくまでも当事者意識を持って現地の方々に寄り添うことが重要だと考えています。私たちだけで現地にある問題に気づき、行動していくのではなく、現地の方々と一緒にその問題について考えていきたいという思いから「考える」を。また、将来、村を支える存在である小学生とは、同じ場を共有することによってその問題を共に感じ、未来につなげていきたいという思いから「感じる」を。

 この三つの言葉から、団体の指針である理念は形成されています。

活動目標

 『チャンパサック県の内発的発展のために、人々の内面的成長を促す』

 

私たちは上記の理念を軸に、「チャンパサック県の内発的発展のために、人々の内面的成長を促す」を活動目標としています。

教育支援を行うことで、将来について考え、そのために現状を見つめ直し、今何が必要なのかを考える力を養い(=内面的成長)、そこからチャンパサックの人々が、自分たちで行動していってほしい(=内発的発展)、という思いから、この目標が掲げられました。

班紹介

7期理科班― 

                        文責:7期理科班班長 国本愛

 

<理科班の7期の目標>

①“勉強を面白いと思ってもらう”②“思考力を養う”

 

前回までの反省を生かした形で、さらにそれを実現するために、「予想→実験→結果」というステップを大事にし、また、「身近な題材」を扱い、さらに習ったこと、実際に実験で体験したことを「身近な例」とつなげ、「そうだったのか!」という驚きを繰りかえすことで、“勉強を面白いと思ってもらう”ということを目指しました!

そこで決まった今期の題材が・・・・“水溶液”です!!

 

 

1日目:「水溶液の性質を知ろう」 

①溶けると混ざるの違い 

塩と小麦粉を水に溶かした時の違いを見て、白く濁らず沈殿しないのを“溶ける”というのだ、とみんな理解できました!

②溶ける様子

1人ずつすべての子が水に塩を垂らすという実験を行い、「霧みたい!煙みたい!」と溶ける様子をそれぞれ発表してくれました!

③溶ける限界

子どもたちはペアになり、このコップの水にどれくらい塩が溶けるのか、予想しながら実際に少しずつ溶かしてみました!だんだん溶けにくくなってくるのに悪戦苦闘しながら、どの机が早く溶かせるか、競争をして大盛り上がりでした・・!!最後は、九九をしてみんなで確認。また、同量の水で砂糖の溶ける限界もやってみると、その量の余りの違いにおおーーっっと驚きの声も!

④浮かせる

塩と砂糖を実際に自分たちで溶かしたそれらの水溶液、実は不思議な力をもったんだよ、とじゃがいもが浮くことを試してもらいました!みんな水には沈んだじゃがいもが浮いたことに反応!なかには知っている子もいたのにびっくり・・!こうして自身で実験した実験を11つ記録するという記録用紙の記入にもチャレンジ☆

 

2日目:「水溶液を見分けよう」

①溶けているものを取り出せるかな?

塩水、砂糖水、水の3種類の水溶液を黒画用紙の上に垂らして時間をおくと、3つとも結果が違うことを実験しました!ぺたぺたと残った砂糖を舐めてみる子も!みんな白く残った粒は塩だとよくわかってました!

②熱するとどうなるのかな?

塩水、砂糖水、水を熱してみると・・・?3つの変化の違いに子どもたちは身を乗り出して、メンバーが熱する様子を観察していました!そしてその後の結果はみんな自信を持って、前で発表してくれました!

③水溶液を見分けてみよう!

うーん・・何の実験しようかな

いよいよ最後の集大成・・・2日間で習った知識を思い出し、塩水・砂糖水・水の3つの水溶液を自力で見分けます!さあ自由にどうぞ、でなかなか動き出せない子が多い中、一部今までの実験をしっかり理解していろんな実験を試してくれる子も!やっぱり自分での実験は楽しそう!

 

 

2日間を通して、題材から高学年対象になってしまったのが悔やまれる面でもありました。次回はすべての子への配慮も検討が必要です。

ものが溶けるときのシュリーレン現象を観察!
ものが溶けるときのシュリーレン現象を観察!
3つの透明な水溶液を見分けよう!
3つの透明な水溶液を見分けよう!

 ―7期地域班―

文責:地域班班長 金井寛之

 

地域班は今期初めて発足された班であり、スーンとして今までやったことがないことに挑戦した班です。

地域班は子供達に地域への愛着(帰属意識)を持ってもらい、身の周りにある物事(村の伝統的風習・しきたり、仕事、食文化、村の歴史・遺跡、自然)について再発見してもらい、子供達の『地域』への興味関心度合いを調査することを目的としました。

 

 [メンバーによる発表]

「地域との対話」というテーマの下ラオスと日本の文化の紹介(発表会)を行うということで、一日目はスーンメンバーが子供たちに日本の文化である七五三、そうめん、パンケーキ、食事のマナー等について発表をしました。二日目に子供たちがどのように発表をすればいいのか例を示すために、私たちもテンプレに沿って絵をかきそれに説明を加えるという形で発表しました。特に食事のマナーの発表の際には「いただきます」と「ごちそうさまでした」を実際にみんなで練習しました。子供たちは慣れない日本語で難しいながらも積極的に声を出してくれて、ラオスにはない日本独特のあいさつに興味をもってくれているようでした。

 

 

[試食]

今回実施した「試食」はスーン発足以来初の試みです。日本の文化・風土の違いというものを、知識だけではなく肌で感じ取ってほしいという観点のもと、「そうめん」の試食を行いました。ラオスには「カオ・プン」というそうめんに非常によく似た麺が存在しますが、サラダに混ぜたり、生春巻きの具として用いたり……と、その食べ方は大きく異なっています。そうめんを「めんつゆ」につけて涼を楽しむという日本式の食べ方は、ラオスの子供たちにはいささか衝撃的だったようです。ラオスと日本の食文化の似ている面と異なる面、その双方を感じ取ってもらえたのではと思います。

 

 

[子どもたちによる発表]

二日目の授業では各自家で調べてきてもらった宿題を子どもたちに発表してもらいました。発表の内容は、村の食や行事など村の文化に関するものです。普段、子どもたちに調べ学習や人前で発表する機会が少ないということでこのような発表形式の授業を行いましたが、多くの子どもたちが緊張しながらも一生懸命発表してくれました。

今回の授業を通じて、調べる楽しさや発表する難しさなどを感じてくれたのではないかと思います。

「いただきます」を言って、そうめんとパンケーキを試食。
「いただきます」を言って、そうめんとパンケーキを試食。
宿題で調べてきた、自分たちの地域の文化について発表
宿題で調べてきた、自分たちの地域の文化について発表

調査結果

 

―7期調査部―

 

 

【調査部概要】

調査部は、班活動を行う上で自分たちに足りない知識を補うための調査に重きを置いて活動する部である。発足したのは5期の活動時で、それまではラオスに関する基礎知識が薄いまま班活動を行っていたのに対し、もっと足場を固めてから行ってゆきたいと考えてのことであった。

そこで5期、6期は日本国内のラオスに関わっている団体に話を聞くことと、ラオスに行った際に小学生の家庭に家庭訪問をすることを主な活動にしてきた。特にラオスでの家庭訪問は、活動をしていても完全には予想しえない現地の人々の姿を肌で感じられるため、メンバー全員が意義を感じて継続している活動である。

 

 

7期調査内容:衛生調査

 

(1) 調査目的

 当団体では、第1期からラオスの衛生状況に問題意識を持って6期まで継続して活動を行ってきた。しかし、活動を続けるにあたって、次第に現地の状況を知らないことによる壁にぶつかることとなった。

 そこで、本当に意味のある衛生活動を行ってゆくために、少しでも多くの情報を得ようと、今期は衛生に関する授業を全く行わずに調査のみを行うことになった。具体的には、「どのような病気や症状をどれくらいの頻度で患っているのか」と、「どれくらいの頻度で患うと危険だと思うのか」、そして、「衛生活動に必要とされているものをどれくらいの割合で所持しているのか」と、「その所持状況が各家庭の経済状況と完全に比例しているのか」ということを知るための調査を行った。

 

 

 ( 2 )  調査方法

A)     低学年(1~3年生)対象調査

 ラオスでは小学校に入ってから字の読み書きを学ぶため、低学年の子どもたちは満足に読み書きができない。読み書きの学習については、1年生で文字を覚えて簡単な単語を学び、2年生でそれを文章にまで応用させるのだが、必ずしもすべての児童が完全にその学年で求められるレベルまで成長できるわけではないと先生方が教えてくださった。

 そのため低学年には、質問紙を提示したところで溶かせるのは至難の業であることは行く前から予測できた。そこで、質問数を限り、更にボードを作成して当てはまる選択肢にシールを張ってもらう、という形式にすることで回答の簡易化を図った。

 最初の内は子どもたちがゲーム感覚で行ってしまっている雰囲気があったのだが、頻繁に質問文を確認し、ボードを持っているメンバーが子どもたちに直接改めてラオ語で質問をすることで一人一人が考えて選択肢を選ぶようになったのは非常に印象的だった。

 

B)     高学年(4,5年生)対象調査

 低学年からは量的なデータを得ることにしたのに対し、やはりより意義のある活動を創り上げてゆきたいと考える中で欲しいのは質的により良いデータである。質問紙調査など受けたことがないのは低学年と共通しているが、最低限自分の名前を書くことはでき、簡単な文章なら共通して読めるだろう高学年からは、質問紙でデータを取ることにした。

 実践してみて、やはり子どもたちは答え方に慣れていなかったため、当初は1問目のみやり方を説明してそのあとは各自回答してもらうという流れにするつもりではあったが、全問の問題文を全員で音読して確認した上で同時に回答する時間を設けるという流れに変更する運びとなった。ただし、子どもたちが優等生ぶった回答をするのではないかと懸念していたのだが、時間と手間をかけた分、子どもたちの回答は予想以上に幅広く得られ、その後に行った個人質問でも、その質問用紙に応じた質問で理解を深めることができた。

 この調査で最も興味深かったのは下記の質問項目の3にある「持ち物に関する質問」への回答で、石鹸、歯ブラシ等の衛生用品と扇風機、エアコン等の家電と2種類の持ち物の所持状況を訊いたのだが、ここでそれらの所持状況が比例しないことが分かった。つまり、衛生意識と家庭の経済状況とは相関関係にないことがわかり、これがまず衛生活動を行う意義を示す結果の一つとなった。

 

C)     家庭訪問

 今期は通訳を増やしてメンバーを5つのチームに分けて20軒のお宅に伺ったのがそれまでからの大きな変更点だった。主な質問事項は衛生のことで、聞きたいことを全てのチームで共通に訊いたのだが、メンバーの中には初めて家庭訪問をしたというものも多く、各々それまでの印象からガラリと変わる物を感じていた。衛生調査の面では、家庭でも衛生に関する指導は行われているらしいことが分かり保護者の存在が頼もしく映った半面、必ずしも正しい知識や正しい問題意識を持っての指導ではないらしいこともわかり、今後の活動で焦点を当てるべきところが浮き彫りになった。

 また、今回初めて、保護者の方から団体の活動を保護者にも紹介したらどうかという提案があり、他の家庭でももし授業参観を行ったら見に来るかと聞いたところぜひ行きたいとの回答が返ってきたことは、団体の活動がそれだけ認知され興味を引く存在になっていることを示すため、メンバーとして非常に嬉しい収穫であった。

 

Cf.《質問項目》

1. 経験に関する質問       

・ 以下の症状をどれくらいの頻度で患いますか?

(虫歯/腹痛/発熱/下痢/感染症)

 

 ・以下の衛生活動をどれくらいの頻度で行いますか?

(手洗い/歯磨き)

 

2. 危険度に関する質問   

以下の症状がどれくらいの頻度だと危険だと感じますか?

(虫歯/腹痛/発熱/下痢/感染症)

 

以下の衛生活動をどれくらいの頻度で行えば十分だと感じますか?

(手洗い/歯磨き)

 

3. 持ち物に関する質問   

以下のものが家にありますか?

(石鹸、歯ブラシ、歯磨き粉、シャンプー、コンディショナー、トイレ、扇風機、エアコン、冷蔵庫、洗濯機)