第10期活動報告

代表挨拶

 

記念すべきスーン10回目となる今回の渡航は、郡との契約のための前乗り201429日~215日と、小学校等での活動216日~31日の全行程約3週間となりました。

 

前期、ソフト面での支援からハード面での支援にまで活動の範囲を広げました。さらに今回は、ノンヴィエン・ノンサ小学校に通う子供達から、小学校に関係するより多くの人達へと、さらに活動対象の範囲を広げました。具体的には、①子供達の発言力を養う授業、②先生方の日々の授業の向上を促すワークショップ、③村人達へのスーンの活動紹介と村人達を巻き込んだ運動会の開催、④ノンヴィエン小学校での図書室開設とノンサ小学校への250冊以上の本の寄贈を行いました。

 

私個人として特に印象的だったのは、ノンヴィエン・ノンサ小学校への本の寄贈でした。自分たちが思っていた以上に、現地の人から喜んで頂き、スーンとしてひとつ、形に見える成果というものを残すことが出来ました。これからも、誠実に、現地の方々と同じ目線に立ち、形に見えづらいソフト支援の方も形として残せるように全員で邁進していきます。

 

さて今回も、このような有意義な活動を行うことが出来たのは、たくさんの方々のお陰であったと心から感謝しております。

 

図書室の開設の為に寄付を下さった、株式会社Global Knowledgeの皆様。

 

運動会の開催、そして現地での役人・通訳・移動費の為に寄付を下さった山岸克彦様。

 

先生班のヒアリングに協力し、チャンパサック郡への契約書の橋渡しをして下さった一般財団法人民際センターの志賀ダウル様と民際センターの皆様。

 

同じく、先生班のヒアリングに協力して下さった、公益社団法人シャンティー国際ボランティア会の鈴木敦子様。

 

図書室の開設と本の寄贈の為に尽力して下さった、特定非営利法人ラオスのこどもの皆様。

 

いつもスーンの活動を見守って下さる、東洋大学助教授の箕曲在宏様。

活動に使うラオス語の翻訳をして下さった、東京外国語大学ラオス語学科の矢作衣里さん。

 

最後に、いつもご指導を頂いている顧問で早稲田大学文学学術院の西村正雄先生と、増見エミ様、そして早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターの皆様。

 

まだまだ、書ききれないほど多くの方々のご協力を頂きました。

この場を借りて深く御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

 

10期代表 山崎緑

班紹介

授業班

◆目標

<低学年>自分の思いを伝えられるようになる

<高学年>自分の意見を積極的に発言できるようになる


10期授業班の目標は9期の問題意識から始まった。それは授業の最後に、授業の感想を書かせると、ほとんどの子供が文章でなく単語しか書けなかったのである。そこで私たちは、子供たちにもっと自由に自分の考えを表現できるようになって欲しい。それを仲間の前で発表できれば尚良いと考えた。また、普段の授業中に発言する機会は少なく、優秀な子以外は間違えを恐れて手を挙げたがらない。スーンの授業でも、手を挙げて前に出てきても黙ってしまう子供が多い。それらの問題意識から、今回の授業は科目を指定せず、「発言させること」に重点を置いた。

 

 

◆今期取り入れた新たな工夫

 <1> 発言を促す歌の作成(ラオ語)

『ポッカンマイ コンキーアイ(恥ずかしがり屋にさようなら)』

作詞作曲  大井樹

                       ラオ語翻訳 矢作衣里

ミームーカーハー(勇気を持って)

ニョックムー(手を挙げて)

ヤー フースック アーイ(恥ずかしがらないで)

ポッカンマイ コンキーアイ(さようなら 恥ずかしがり屋に)

ザラーン クワキットメー(発言をしよう)

 

シアン ダンダンティーノ(声が大きくていいね)

ワオピット コ ボーペンニャン(間違ってもいいんだよ)

ポッカンマイ コンキーアーイ(恥ずかしがり屋に さようなら)

ロンヘット ブン ディーノ(よくやったね!!)

 

<2> 授業の真ん中の休憩の際に、司会と通訳の立つ位置を前から後ろにすることで、こどもの座っている位置によって集中力がきれないようにする


◆所感                           

今回の授業班のテーマとして据えたのが、こどもが「積極的に発言」できるような授業を行う、ということであった。実際に授業を行ってみると、こどもたちの反応はわたしたちの予想をはるかに上回るものであった。わたしたちの問いかけに対し、たくさんのこどもたちが身を乗り出して高く手をあげてくれており、一体どの子をあてたらいいのかこちらが迷うほどであった。さらにわたしが驚いたのは、その発言の内容である。高学年では単語ではなく文章での答えを要求するアクティビティーも多かった。授業を作っている段階では班の中で、こどもは回りの子のマネをして同じような答えばかり出てしまうのではないかという懸念点があったが、こどもたちはわたしたちの思っていた以上に、想像力やそれらを発信する能力を持っていたことを実感した。


さらに授業を行って嬉しかったことが、1クラス二日間という短い時間の中で、こどもたちの成長を目にすることができたということである。わたしたちの授業に対して本当にたくさんのこどもたちが積極的に発言をしてくれた。しかし中にはものすごく恥ずかしがり屋でなかなか手を挙げてくれない子もいた。「手を挙げてみようよ」とこちらから促しても首を横に振るばかりであった。そんな様子で授業はすべてのアクティビティーを終えた。最後に今までの授業の感想を聞いてみたとき、頑なに拒否し続けてきた恥ずかしがり屋がついに手を挙げてくれたのだった。彼女にどのような心境の変化があったかはわからないが、わたしたちの行う授業でこどもたちも何かを感じとってくれたのだと思うと、半年かけて色々迷いながらも授業を作ってきて本当によかったと思った。


このようなこどもの成長を見ることができたのも、こどもが手を挙げた一瞬を見逃さないでいてくれたスーンの仲間や、わたしたちの授業に理解を示しずっと隣で助け続けてくれた通訳さん、スーンの活動に積極的に参加してくれた現地の先生方をはじめとするたくさんの人々の理解と支えがあってのことであり、どんなに感謝してもしきれない。これからもたくさんの人と協力しながら、こどもたちが成長できるような授業を作っていこうと思う。


先生班

【班目標】

10期目標)チャンパサックの人々にとっての良い教育モデルを作り、それをノンビエン・ノンサ小学校の先生たちと共有し、先生たちに体験してもらう

(最終目標)先生たちの日々の授業を良くする

 

【班発足の背景】

当団体は、9期までノンビエン・ノンサ両小学校において、様々な分野における題材を利用した授業を子供たちに向けて行ってきた。しかし、9期の渡航を機に、スーンの活動をより継続性のあるものにするためには、従来の「子供たちを対象に授業をする」以外の手段が必要であることが明確になった。


きっかけとなったのは、まず、小中学生を対象とした調査の実施であった。スーンの行う授業を受けてきた生徒数人へ「スーンの授業で覚えているものは何ですか。」と質問をしたところ、具体的な答えが返ってこなかった。このことから、スーンはただ楽しいイベントを行うだけの団体になってしまっているのではないか、それならば半年かけて授業を作る意味は何なのか、と授業班体制を疑問視する声があがってきた。

  

 また、先生たちの行う授業をスーンが見学した際にも、「子供たちが授業に飽きている。」「先生たちの授業に改善の余地があると思った。(=教育に対する意識が低い)」「先生たちが威圧的過ぎる。」「授業に工夫を凝らして上手く生徒を引き付けている先生とそうでない先生たちとの差が目立つ。」という意見が多かった。スーンの行っている授業が、先生たちに「授業クオリティーの向上」をもたらすことは期待できない、と裏付けられたようであった。スーンの活動は半年に1回(2週間)しかなく、活動の効果をより継続的なものにするためには、普段から生徒と直接関わりを持つ先生たちの教育に対する意識の向上が不可欠である。

 

 スーンが「チャンパサック県に暮らす人々の内面的成長を促す」ことを指針として活動している以上、また、そのために子供たちへのアプローチだけでは不十分と考えられる以上、スーンは新たに「先生」を直接のアプローチ対象として活動の幅を広げるべきであるとの結論に至った。

 

 そこで発足したのがこの先生班である。


図書班

■班概要

当班は9期の贈書チームを引継ぎ、ノンヴィエン小学校に図書室設立、ノンサ小学校に本の増書をするための班である。

 

■班発足

 スーン1期~8期にかけてチャンパサック県にある2つの小学校を対象に「教育」というソフト面の支援を継続して行ってきた。ラオスでは暗記教育が行われており、子どもたちが積極的に意見を発言したり、子どもたちの創造性を掻きたてたりするような授業は少ない。スーンは理科実験の授業や世界の多様性を教える授業など「今のラオスの人材やカリキュラムではなし得ない授業」を行ってきた。


しかし私たちスーンがラオスに渡航することができるのは、半年にわずか1回。その間にいくら子どもたちにとって有意義な授業をしたとしても、私たちがいない間は継続してそれを行うことはできない。そこで私たちがいない間でも子どもたちの発想力を育むことのできる「本」があればと考え、9期に贈書チームが発足した。


9期では企画の意義や本の教育への効果をまとめたり、現地の先生方と図書に関するワークショップを行ったりして10期に贈書が行えるように環境を整えた。そして9期の贈書チームを引き継ぎ、贈書を実行するための10期図書班が発足した。

 

■現地の現状

 班の活動を始める前に、9期終了時点でのノンサ・ノンヴィ小学校の図書に関する現状(解決すべき課題)を整理した。

 

ノンサ小学校

2002年に政府のプロジェクトによって200冊ほどの本が贈られたが、子どもたちはほとんどの本を読みつくしてしまっている。

・幼稚園児や1年生向けの本が少ない。

・週に1度、図書の授業を行っているが、まだまだ改善の余地がある。

(高学年の生徒には適当に本を与えて各自で読ませる。低学年には先生による読み聞かせ。)

 

 

ノンヴィエン小学校

・ノンヴィ小学校は全校生徒の人数が少なく2002年の政府のプロジェクトの対象にならなかったため、本が全くない

1人の先生がノンサ小学校まで本を借りに行っているが、子どもたちが本を汚してしまう恐れがあるため借りづらい

・先生たちは本が子どもたちの教育にとってどれほど大事かを知っている。

9期のワークショップで確認済み)

 

結果私たちの活動の焦点は、本はあるが図書の授業に改善の余地があるノンサ小では「図書の活用方法」について、本の全くないノンヴィエン小では「図書の環境作り」にあたることになった。

 

■班目標

〈最終目標〉

①子どもたちが多くの本に触れられるような体制を構築する。

②先生たちが学校で有効的に本を使えるようになることで、教育の質を高める。

③スーンと学校と村が共同で図書PJを進めていくことで、村全体の図書PJの自主性を高める。(本の増量システムを構築できる)

※本の増量システムとは村で募金をして新しい本を増やしたり、近隣の小学校で本を交換したりしてスーンが関わらなくとも自主的に本を増やしていけるようになってほしいということ。

 

10期ミッション〉上記目標達成のための10期の活動指針

2校共通:本に対する関心を高める。

ノンサ:先生が本の上手い活用方法を考える。

ノンヴィエン:子どもたちが本に親しみやすい環境を作る。


資金かけはし班

■資金かけはし班発足

10期ではノンビエン・ノンサ小学校に贈書をすることが決まり、そのための資金を調達する必要があった。9期で協賛活動に初めて取り掛かり、スーンが外部へ発信し、外部と接触を持つよい機会になるという手ごたえがあったため、贈書のための資金は企業から協賛金として募ることを決めた。その資金調達活動全般を請け負うため、資金班ができた。


9期終了時に、学校と村人との関係性が希薄であるという問題点があがった。これは、子どもたちに良い教育環境を作るにあたり不足していることを改善したくても、財政的、物理的な面で頼る人がいないという先生方からの言葉があったからである。私たちは、学校で何か問題が起こったときに先生方だけが頭を抱えるのではなく、村長や親等にも協力を求められるような、学校と村の組織が連携して村全体で子どもを育てていくような環境が必要なのではないかと感じた。学校と村の組織との間を取り持つ「かけはし」になれればと、かけはし班が発足した。


 資金班は国内での活動のみで、渡航中の現地ではすることがなくなってしまうため、主要な活動が現地で行われるかけはし班と合併することになり、資金かけはし班となった。


■資金について


(ⅰ)目標

10期で行う贈書にかかる費用は、ノンサ小学校(約300冊寄贈)2万円、ノンビエン小学校(図書室開設)20万円、移動費(スタッフ・本)約3万円で、計25万円であった。ここから、早稲田祭の収益やホームカミングデーの売り上げ費用などを差し引き、今期集めなければならないお金は17万円となった。次期以降も協賛を継続的に取り続けていきたいという思いから、「今後の資金調達の土台となる協賛企業を募るため外部発信を強固なものとする」という目標を持ち、17万円の目標金額の獲得を目指した。


結果として、35万円の協賛金を得ることができた。ラオスに進出している企業や教育に関連のある企業を調べ、100社ほどにメールを送ったところ、目にとめて関心を示してくださったグローバルナレッジネットワーク株式会社様に10万円のご協賛を頂き、CBC株式会社の山岸克彦様に個人献金として25万円のご協賛をいただいた。ただし、グローバルナレッジネットワーク株式会社様より頂いた10万円は団体のそれまでの収益と合わせ、ラオスのこどもに支払う図書代とし、山岸様より頂いた25万円は、かけはし主催の運動会の開催費用、役人代に充てた。


■かけはしについて

9期での活動から、学校と村の組織はあまり連携してないということがわかった。そこから、村人の中では子どもに良い教育を受けさせようとする意識が低いのではないかという問題点があがり、学校や先生方だけが行う教育ではなく、村人にもそこに協力して、村全体で子どもを教育するという環境が必要なのではないかと考えた。そのためにはまず村人に教育が重要だと認識してもらうことから始めなければならない。そこで、かけはしの活動を行う上での目標を「村全体で子どもを育てるという気持ちを持ってもらう」とし、そのための今期での方向性は「村人たち自身が教育が重要だと考えるようになる」とした。


村人に村全体で子どもを育てるという気持ちを持ってもらうためには、まず教育が重要だと考えてもらうことが必要で、そのためにはスーンに協力してもらうことが村人にとって簡単なのではないか、そしてスーンへ協力していく体験の中で、私たちが教育をいかに重要と考えているかを伝えられるのではないかと考えた。そのための第一段階として「スーンを知ってもらう」ことが最優先であり、これを10期の班目標として掲げた。団体を知ってもらうことで、こういう活動がある、この活動にはこのような意義があると理解してもらえたら、スーンに興味を持ち、活動に協力してくれるのではないかとの考えに至った。


しかし、果たして本当に親を含む村人たちは教育が重要だと考えていないのだろうかという疑問が浮上したが、私たちは答えを出すことができず、その答えを知るために10期では今後のかけはしの活動につながる調査をすることとした。

10期を調査だけで終わらせたくないという思いがあったが、今期の目標である「村人にスーンを知ってもらう」ことを達成するために、我々が現地で村人たちに参加してもらえるイベントを開催し、スーンのことを知ってもらえる場を作る活動を、調査と並行して行うということで意見がまとまった。


更に詳しく知りたい方は

lao.wavoc@gmail.com までご連絡ください。

報告書をお送りいたします。